はじめに
2023 4/23に上間さんの独演会「辺境 北」に行ってきました。内容は沖縄の歴史・経済・政治や現在の沖縄の課題について、映像も交えながらわかりやすく話されていました。
独演会の時間は普段、学ぶことのない沖縄について考えさせられる良い機会となりました。この記事は上間さんが情熱たっぷりで語った内容の一部を都合が悪く出席できなかった人や自分の復習のために、
まとめてみました。
第一部 沖縄の歴史の成り立ち
沖縄の歴史は大きく5つに分けられる。
- 国の単位ではなく、血縁関係中心で集落をつくっていた先史時代
- 城(グスク)時代~三山時代
- 琉球王国~琉球藩時代
- 廃藩置県による沖縄県の設置から米軍統治
- 本土復帰から現代まで
琉球王国建国~沖縄戦、戦後~米軍統治~復帰~現在
琉球王国が建国したときから、財政は常に厳しい状況だった。沖縄は資源が取れない。経済力や軍事力が脆弱な琉球は民国や清国、(現在の中国)に貢物を送り、属国となることで朝貢貿易を発展させてきた。
この時代、日本は鎖国をしていたため北海道の昆布などを琉球を中継地として中国に輸出していた。朝貢貿易の影響が現在でも残っており、沖縄の海では昆布はとれないが、消費量は全国1位となっている。
1429年に琉球王国を建国し独立を保っていたが1609年に薩摩侵攻に伴い、その後は薩摩藩の支配下となり重税に苦しめられた。
1868年に江戸幕府から明治政府に移り変わると、1872年に琉球藩にした後、1879年「沖縄県」を設置し日本の一部となる。その数十年後の1945年に日米戦争に巻き込まれる。本土防衛のための時間稼ぎとして、兵隊、住民合わせて20万人以上の戦死者を出した。
戦後は米軍の統治下となり、事故や犯罪などに巻き込まれても基地に逃げ込めばおとがめなしの不平等な時代が続いた。
1972年に念願の本土復帰となる。しかし、主要な基地は残り、また、辺境である沖縄は本土よりも情報やインフラに後れを取り、経済格差は未だに大きな隔たりがある。
政府も復帰後の経済対策として、沖縄振興計画を10年毎に策定し海洋博やコンベンションセンター、空港や高速道路などのインフラ整備に力を注いでいく。近年では沖縄高専や沖縄大学院大学などを設置し先端技術や教育にも予算を費やしている。
沖縄の経済と観光
インフラの整備が整ってきた1990年代、辺境である沖縄の亜熱帯の気候が観光地として注目される。ちゅらさんなどのメディアの影響もあり沖縄に観光ブームが到来する。
2019年には入域観光者数が1000万を超えてハワイと同規模になっていった。この沖縄に大きな追い風として2025年には自然を生かす沖縄北部テーマパークが開園となる。
新観光時代
名護市の旧嵐山ゴルフ場に建設予定のテーマパークはディズニーランドよりも広く、美ら海水族館よりも予算の大きな施設となる。今後は美ら海水族館やテーマパークでの滞在時間が増えることで、宿泊や飲食などの観光関連の経済効果が期待される。
また、海外から4時間前後でアクセスできる経成長が著しい東南アジアや東アジアからの観光客の増加が見込まれる。国の支援によって成り立っていた経済が自立する初めてのチャンスとなる。
光が強ければ闇深し
沖縄(北部)に観光客や観光関連の就業者が増えることで急激に人口が増え、交通渋滞や騒音、物価の上昇などのマイナスな面も表出していくことが考えらる。
経済的にプラスでも家賃などの高騰などで地元住民の生活を脅かす恐れもある。北部が観光として栄えることでのマイナス面にも焦点を当てて、考えていく必要がある。
沖縄経済の産業構造と所得格差
沖縄の産業構造と所得
沖縄
平成27年 沖縄県県庁ホームページ
1次産業 1.3%
2次産業 14.5%
3次産業 84.2%
全国 総務省統計局2005年
1次産業 5.1%
2次産業 25.9%
3次産業 67.3%
沖縄は全国に比べて製造業が少ない。辺境の地であるため輸送コストなどの不利な状況がある。沖縄は地理的な要因で、日本を先進国に押し上げた製造業による経済の恩恵を得られなかった。
沖縄平均所得は241万円
全国の平均所得は318万円
2022年8/16(沖縄)タイムス
戦後70年経っても本土との経済格差は埋まっていない。
沖縄のソフト(人材)
沖縄の経営者の特徴
数字に弱く、決算書を読もうとしない、読めない経営者が多い。決算書を把握しなくてもどうにかやっていける現状があり、その必要性を感じていない。しかし、数字を把握しないと本質的な会社の課題や改善点がぼやけてしまう。
数字は資本主義社会のルールであり、経営者の成績表である。これをわからずに経営していては会社は計器のない車に乗っている状態でアクセルを踏むべきなのか、ブレーキを踏むべきかが正しい判断ができなくなる。
沖縄の人の人間関係
沖縄の特徴の一つとて、出世の打診を断る人が一定数、存在する。同僚との人間関係を重視する理由から、出世による経済的な恩恵を望まない人たちのことである。
「このことを沖縄から貧困がなくならない本当の理由」の著者 樋口 耕太郎氏は目に見えない同調圧力があると指摘した。
県外で活躍している沖縄出身者も、この同調圧力が嫌で帰りたくないという人も少なくない。
沖縄の政治
沖縄は基地反対の革新政党と経済優先の保守政党が交互に県政を担ってきた。あかちゃんがよちよちあるきするように何とかバランスを保っている状況が続いてきた。
現在は革新の玉城デニー知事が二期目を担っているが、直近の県知事選は投票率が57.92%と県民の関心は低い。民主主義の根幹である選挙によってリーダーを決める機能にあきらめムードが漂っている。
上間喜壽の思い
沖縄県民の意識はメディアも含めて国と対立すること構図に偏っている。沖縄だけ米軍基地が押し付けられている。大型の公共工事は下請け、孫請けの利益の少ない仕事だけ回ってくる。弱いものいじめ、沖縄は差別されている。
この沖縄を弱者扱いする意識を上間さんは弱者アイデンティティと名付けた。
この言葉を聞いた時に、胸に突き刺さる思いがした。私自身、本土出身の有能な人に出会うと、何度も「沖縄とはレベルが違うな」と思ったことがある。本来は個人の能力の差であることを「沖縄の人は下、本土の人は上」と判断していた。
これをスポーツに例えると、試合が始める前から「本土のチームには勝てるわけない」とあきらめているのと同じである。上間さんが指摘した弱者アイデンティティは沖縄県民のこころに大きく浸食している。このことを憂いたのだ。
問題の本質は外ではなく内にある~原因自分論~
本当に問題は国や他者を悪者にするだけで解決するのか。問題は自分の内側にないのか。今まで、本土の企業の対等に交渉できる人材を育成してきたのか。
チャンスがきたら、いつでもバットを振れるよう準備をしてきたのか。他人のせいだけにして問題をすり替えてないだろうか。歴史上沖縄は良くも悪くも外からの外圧の影響を受けてきた。
これから時代はまた大きな転換点を迎える。
この大きな変化を乗りきるためには知性が必要になる。
知性とは勉強ができることではない。何を知らないのかを知ること。知らないことを知ろうとすることである。
2025年から始まる大きな変化をチャンスとみるか、脅威とみるのか。または見て見ぬふりをするのか。それは一人一人がどう考え行動するかで変わってくる。
最後に
上間さん、私たちに歴史、経済、政治をわかりやすく、説明してくれてありがとうございます。沖縄の希望や課題が自分ごとのように入ってきました。
沖縄が自立できるかどうかのカギは県民一人一人が、弱者アイデンティティーから脱却すること。
この1点だと思います。
上間さんの熱い思いが火種となって沖縄に伝播すればきっと経済的な自立、精神的な自立を達成できます。一緒に未来の沖縄を作っていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
tおいう